[#13]【バッシュ解説】バッシュの寿命は壊れるまでではない
EN-TRAINトレーナーのぱらとです。
この記事ではTwitterでの発信を深掘りしていくことで物理的な本質からパフォーマンスアップを図るお手伝いをしていきます。
取り上げるツイートはバッシュの寿命について解説したコチラ。
バッシュの劣化は生産した時点から始まっている
バスケをするうえでバッシュは欠かせない道具の1つですが最近のバッシュはソールユニットだけでなくアッパーユニットも高分子材料で構成されていることが増えてきました。
高分子材料というのはとてもザックリと分類すると樹脂製品(プラスチック)全般を指します。
つまり現代のバッシュは構成材料のほとんどがプラスチックということになります。
高分子材料というのは安価で安定的に狙った性能を出せ、しかも大量生産しやすいとモノづくりの場面においては欠かせない材料となっています。
多くのメリットを持つ高分子材料ですが当然デメリットもあります。
それは生産時点から性能は劣化を始めてメンテナンスなどで性能を回復することはできない、ということです。
高分子材料は合成処理を行った段階で物質としての構造(高次構造)が確定し、確定された構造は分子結合によって支えられているのでこれが切れたり別の物質と反応して違う結合になったりすると元に戻ることはできません。
そのため、高分子材料の物質的な変化は一方通行でしか起きないということです。
その変化は高分子材料が期待されている性能の変化の視点で見ると性能が低下していく方向なので”劣化”という表現になるわけです。
劣化の種類としては材料力学的にいうと引張強度だったり弾性率だったりがありますがバッシュの場合は部材によって劣化で感じやすい低下する性能が違います。
アッパーユニットでいえば繰り返し曲げられたり、横方向や前後方向の動きによって強い荷重を受けたりすることによって足のロックダウン性能だったり動きの中での足のサポート性能だったりが低下します。
ソールユニットでいえば繰り返し荷重(圧縮)されたり、曲げられたりすることでソール剛性の低下や反発力の変化(衝撃吸収の面では低下)を起こします。
この他にも紫外線に晒されたり、使用時の汗(水分)を吸収したりすることでもそれぞれの性能劣化は加速していきます。
これらを総合して使い込んだバッシュは”ヘタった”と表現されることが多いように思います。
ヘタりきったバッシュを履き続けることは危険であることは誰しも認識していますがヘタりきる前、性能の変化を多少でも感じた段階でバッシュとしては劣化しているという認識は持っていない方が多いと思います。
天然材料の場合、オイル滴下や磨き処理などによって低下した性能を一部回復するということも可能ですが高分子材料において先ほど説明した通り化学的に回復はしません。
性能の変化というのはあくまで劣化の一種であるということを理解いただければと思います。
最近のバッシュは馴染ませるものではない
最近のバッシュの履き馴染みがほとんど必要ないのはこうした特性を持っている高分子材料を使った構成になっていることが最も大きな要因です。
バッシュとしての機構的な部分についてはバッシュという製品が生まれてからほとんど進歩しておらず、革命的な進歩は未だ生まれずといったところです。
バッシュが足に馴染んできたと感じるのはバッシュの性能が劣化する中で自分の足にとって丁度よい劣化具合まで性能が低下することでそう感じているというわけです。
履き始めがベストと感じないバッシュは自分にとってオーバースペックであるとも言えます(バッシュの構造的問題などで例外はもちろんありますが)。
本業でバッシュにも使われる高分子材料を多く取り扱うモノづくりメーカーの開発エンジニアとしては高分子材料の劣化について無視することはできないので基本的に製造後3年を経過したバッシュは強度の高いバスケでは絶対に履きません。
バッシュの劣化が原因でケガをした、ということは極力避けるべきだと思うので製造から時間の経ったバッシュを履いてバスケをするという場合にはご注意いただければと思います。
こうした材質的な問題はレトロモデルの復刻にも影響を与えています。
“もったいない”“モノを大切に"という考えから壊れるまで道具を使い倒すという方が多い日本ですが、作られているモノ側が壊れるまで使えるように、あるいは壊れても直して性能を回復できるように作られていない設計になっていることが多いです。
それらをキチンと認識したうえでバスケをすることでより安全により楽しく取り組めるものと思います。
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