[#2]トレーニングにおける"バランス良く"の意味
EN-TRAINトレーナーのぱらとです。
スポーツをするうえで"バランス良く"という言葉は良く耳にすると思います。
運動の場面において"バランス"という言葉を聞いてどのような印象を持ちますか?
恐らく多くの場合、左右または前後に均等にエクササイズする、またはエクササイズできるという意味と捉えてるかと思います。
均等に行うこと、それもバランスよく行うという意味で1つの解答となります。
しかし、パフォーマンス向上や身体操作向上という観点では必ずしも均等にやるのが良いとは言えません。
そもそも人間はアンバランス(非対称)
私たちの身体は左右対称でも前後対称でもありません。
前後はともかく左右は対称では?と感じる方もいると思いますが、腕や脚の長さ・肩の高さなど綺麗に左右対称の方はまずいません。
なにより身体の中身(内臓)は間違いなく左右非対称です。
外からは見えませんが内臓は左右非対称に配置されているため身体の構造上左右対称はありえません。
通常左右対称であれば動きの中で左右差や前後差を感じるはずですが、私たちが普段活動する中で自分の身体が左右非対称・前後非対称であるという自覚は基本的にありません。
なぜなら脳を中心とした調整器官が備わっているため、このアンバランスさ込みで均等を保つように身体が働いているからです。
機械なら対称でないと不具合を起こすことがありますが身体の調整機能は非常に優秀で身体はほとんど本人に不具合を感じさせません。
脳が調整しきれない差があると身体の不調やパフォーマンスの低下といった症状がでますが、顕著な差がでないとわからないぐらい身体の調整器官はよくできています。
左右非対称であることの影響
普段の生活では調整器官の働きが優秀なので非対称性による不具合をほとんど感じさせない身体ですが、スポーツやトレーニングの場面ではそうはいきません。
例えば、ボールを投げたり蹴ったりするとき利き手(足)側では強く速く投げたり蹴ったりできますが反対の手ではフォームもままならない、そういう方が多いと思います。
トレーニング場面で言えばダンベルアームカールを行うと右腕と左腕でMAX重量が違う、あるいは同じ重量でトレーニングすると左右の腕で疲労感が違う、といった例があげられます。
脚のトレーニングで言えばスクワットではバランスを保てるがランジをやると左右でやりやすさが違う、といった具合です。
競技場面でのバランスの意味
このような左右非対称性は神経的な影響もあるので筋力や骨格の非対称だけで差がでてくるわけではありませんが、何かしら競技経験のある方は思い当たる節は少なからずあると思います。
競技によってはこの非対称性を強調することでパフォーマンス発揮に繋げる場面が多々あります。
野球のように捕球や投球動作がある競技、テニスやバドミントンのようなラケットスポーツのように打球動作がある競技ではそれが顕著です。
イメージはつきやすいと思いますが野球の投手が左右両方でそこそこの投球ができるよりも左右どちらかで飛びぬけた投球ができる方が重宝されます。
非対称性が強調されやすい競技では能力の高くなりやすい利き手(足)側を鍛えることで選手として総合的なパフォーマンスを向上させていきます。
利き手側ばかりを鍛えることは一見アンバランスなことのように見えますがバスケのシュート動作が綺麗な選手を見て「彼は身体のバランスが良い」と表現されることを見ると、左右の腕は異なる役割をこなしているはずでは、となるわけです。
そうした表現の仕方などから、スポーツ・トレーニング場面でのバランスが良いという言葉の意味を感覚的に理解できるでしょうか。
本来、バランスという言葉は均等・平均的といった意味合いを含んでいますがスポーツでは目的動作が上手くできていることをバランスが良い、上手くできていないことをバランスが悪いと示すようなことが多いです。
実際、スポーツでいわれるバランスの良い動きというのはハイパフォーマンスでケガをしにくい動作を指していると思います。
その点では対称性が求められる競技のように見えるバスケもバランスよく動くのに必要なのは対称性ではなく効率的な美しい動作と認識する必要がありそうです。
左右どちらでも同じ強さ・精密さでできる方が対称性の面ではよさそうですがパフォーマンスアップという点では突出した部分があるのが武器になると捉えても良いでしょう。
極端な話、ドリブルが利き手しかできないOFでも圧倒的なスピードとアジリティを発揮できるならDFも守り切れないということです。
もちろん、本人的には突出したスキルを利き手側に持っていると思っていてもそのレベルが相手より下回っていれば潰されてしまいます。
こうした事態を避けるには左右同じようにトレーニングするのではなく、弱点となる弱い方を重点的にトレーニングすることで利き手側を活かしやすくなるので"バランス良く"という意味に繋がります。
苦手・弱い部分を鍛えるのはモチベーション的にも辛い部分があると思いますが、競技側がそうしたスキルを求めている以上は向上のためには頑張って取り組む必要があります。
自分がやる競技にとって"バランスが良い"とはどういう意味を指しているのか本質的に捉えていないと効率的な練習はできないということです。
まとめ
スポーツ・トレーニングの観点では求められるスキルに合わせて自分の動作を調整していくことが”バランス良く” 動くための答えになります。
競技によって求めてくるスキルは対称的だったり非対称的だったりしますが競技に対する理解を深めることで効率的に練習できるようになれるでしょう。
弱点側を鍛えてバランスを良くするという点ではトレーニングは文字通りアンバランスなエクササイズを実施することもあると認識したうえで取り組むとモチベーションも維持しやすいのかなと思います。
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