[#21]【接触動作】空中での接触したときにおこる力の交換
EN-TRAINトレーナーのぱらとです。
この記事ではTwitterでの発信を深掘りしていくことで物理的な本質からパフォーマンスアップを図るお手伝いをしていきます。
取り上げるツイートはORリバウンドで空中二段ジャンプをしたように見えたWigginsの動きを解説したコチラ。
人間は二段ジャンプできない
引用動画を見るとWigginsの身体が空中で不自然に持ち上がりまるで二段ジャンプしているような動きをしています。
人の身体が自力で二段ジャンプをすることはできないのでこのような動きになるのは外からの力がWigginsの身体にかかっているということがわかります。
その外力をWigginsの身体に加えた正体は同じくリバウンドのために跳び上がろうとしていたZubacの身体です。
ZubacがWigginsの身体の重心下方からぶつかることでWigginsのジャンプの力とZubacのジャンプの力が合わさってWigginsの身体を押し上げる方向に働き空中で再度浮き上がることができています。
ぶつかるタイミングも良く、Wigginsの身体が落下を始める前に接触したのでWigginsの身体に発生する力のベクトル方向としては上方向のみなることでより滞空時間を延ばす方向に働いています。
2つの動く物体が接触するとき接触前にそれぞれの物体が持っていた運動量は接触によって失われることなく一定を保ちます(保存されます)。
これを運動量保存則と言います。
接触によってお互いがお互いに作用・反作用の力を及ぼしあうことで相対的な力を打ち消しあって元々持っていた運動量に変化を及ぼさないことで起きる現象です。
数値的な例でいうと、運動量8を持つ物体Aと運動量3を持つ物体Bでは物体Aの方が大きな運動量を持つのでAとBが接触するとBが大きく弾かれてAは少しだけ弾かれます。
この弾かれた後の運動量は8-3=5というようにお互いの運動量の差によって計算されるわけではなく、接触によってAはBに運動量8を伝えて、BはAに運動量3を伝えることになります(これが作用・反作用の法則)。
その結果、接触後、物体Aは運動量3で物体Bは運動量8で運動を再開します。
これを外から観察するとAの方があまり弾かれずBの方が大きく弾かれる運動の結果が得られます。
AとBそれぞれの視点で見ると運動量は変化していますが、A+B全体で見ると運動量の総量は変化していないので運動量は保存された、と言えるわけです。
空中で再び浮き上がったように見えた理由
今回の引用例の場合は、先に跳びあがって垂直方向の速度が低下していたWigginsの身体(運動量が小さい)に跳びあがりのタイミングで最大速度で動こうとしていたZubacの身体(運動量が大きい)が接触して運動量が保存された結果、Wigginsが大きな運動量を得て二段ジャンプすることができました。
身体の質量的に見てもZubacの方が大きいので跳びあがりの運動量はかなり大きかったはずです。
そうした要因も合わさることでWigginsの身体が軽く浮き上がるように見えたわけですね。
また、Zubacは下からぶつかっていることもあってWigginsの身体を押し切った後は速やかに落下に転じます。
一方のWigginsはZubacによって最大限押し上げられた後、もう一度小さな放射運動を経由してから落下に転じるので物理的な二段ジャンプの機構として働き長い滞空時間を実現することになります。
2物体の接触によって得られる合力の方向(今回の場合、Wigginsの身体が得た力の方向)はWigginsの跳びあがる角度とZubacの跳びあがる角度によって作られる平行四辺形によって決まります。
↑の画像だとF1がWigginsの身体の運動量、F2がZubacの身体の運動量、Fが接触によってWigginsの身体が得た運動量です。
矢印の大きさは質量と速度で決まるので図の矢印の大きさはあくまでイメージですがベクトルの方向を決定するという点ではそれぞれの物体が持つ力の方向と大きさを合わせることで算出できるということは理解しやすいかと思います。
このように物体の運動を力学的に考えるときにベクトル合成という力の考え方を理解しておくことはとても重要です。
何故なら、見かけ上の運動方向や力がかかる方向がその動作を全て決定づけているとは限りません。
細かく力関係を分析していくとその動作を司る本質的な力の発生源というのを見つけることができます。
得られた力の根源を辿りながらS&Cトレーニングやスキルトレーニングに落とし込むことで本質的なトレーニングを構築しやすくなります。
また、得られた分析結果に関連した研究を論文ベースで検索してみることで既に研究が進んでいる内容かどうかを確認することもできます。
研究の進んでいる内容であれば論文ベースの改善方法を見つけることができ効率的なパフォーマンスアップにも繋がります。
力を及ぼしあう物体同士の関係を見極めることが最終的な動作改善に繋がる重要な要素であることを今回のWigginsの空中動作からも見ることができるというわけですね。
ベクトル合成の考え方を理解して身体で実践すると自分の現在の身体でできる最大限の接触強さの発揮やドリブルコントロールのキレを増すといったことにも繋がるので是非一度動きの力の大きさと方向について考えてみてはいかがでしょうか。
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