[#3]超回復は筋肉の発達メカニズムではない?正しい筋肉の発達メカニズム

EN-TRAINトレーナーのぱらとです。

筋肉を大きくしよう(発達させよう)としたときウエイトトレーニングなどで筋肉に負荷をかけて発達を促す方法を選択するのが一般的だと思います。

筋肉を発達させる目的が様々あるように負荷のかけ方も様々ありますが、筋肉が発達する仕組みは実は全部同じです。

筋肉が発達する仕組みは超回復と呼ばれる身体の働きによるものと思われている方が多いと思います。

しかし、実は多くの人が筋肉の発達メカニズムと考えている超回復は筋肉の発達メカニズムとは異なります。

メカニズムを知っていても知らなくても実践するトレーニングが理論的に逸脱していなければパフォーマンスを向上させることは可能です。

しかし、知見として正しい筋肉が発達する仕組みについて理解して損はないので知っておいてもらいたく本記事を書いています。。

超回復とは?

超回復という現象は多くの方が筋肉が発達するときの現象だと理解していると思います。

超回復の内容としてはトレーニングによる負荷で筋繊維が傷ついてそれを修復する際に負荷を掛ける前よりも強くなるように成長しようとすることで筋力アップや筋肥大を促すことができる、というものだと思います。

これを繰り返すことで継続的に成長できると言われています。

実は、この超回復と言われている内容は筋肉が発達するメカニズムでも超回復という現象の説明でもありません。

ではこの内容は何を説明しているのかというとグリコーゲンの超回復と筋肉の発達メカニズムの内容がゴチャ混ぜになった説明をしています。

グリコーゲンの超回復

グリコーゲンの超回復というのは1990年に発表された論文で解説されている有名な理論です。*1

論文中ではグリコーゲンの超回復を以下のように説明しています。

トレーニングによって減少した筋肉中グリコーゲンがトレーニング後36~72時間の間に元の水準よりも多く蓄えられる現象を表す。

"筋肉中に蓄えられるグリコーゲンがトレーニング後にトレーニング前よりも多く蓄えられる"という部分が筋肉が大きくなるという内容に誤認されてしまっていることが多いようです。

この勘違いが広がるのに筋肉痛の回復期間が重なっていることも影響しています。

大抵の場合、トレーニング後36~72時間の間に筋肉痛は回復します。

筋肉痛の回復過程と筋グリコーゲンの超回復過程で重なる部分があったために勘違いが起きやすくなっているようです。

厚生労働省のような公的機関の解説でもこのような内容で説明されていることもあり誤認に拍車がかかってしまったようです。*2

筋肉が発達するメカニズム

一般的に知られている超回復の内容が筋肉の発達の仕組みではないとすると、筋肉はどのように発達するのか。

それは筋肉がストレスに対して適応しようとする反応によって引き起こされます。

筋肉に限らず私達の身体は温度変化などの環境の変化に対して身体を守ろうと反応します。

この環境の変化というのは身体に対しては負荷(ストレス)のため、自己防衛の機能によって対応しようとするわけです。

トレーニングで筋肉が受ける刺激(負荷)もストレスの一種です。 

筋肉もストレスに負けないように適応する反応を起こすのでトレーニング負荷によって筋肉が発達してくれるわけです。

与えた負荷に負けないように筋肉が成長するという点では勘違いとした超回復の内容も概ね間違ってはいません。

言葉の定義や指し示す事象を厳密に見ると誤認となるだけなので一般認知という点では超回復という言葉を使うほうが便利な場合もあります。

私も指導の場面ではあまりシビアに間違いだ!と指摘はしないことが多いです。

筋肉のストレスへの適応過程

筋肉がストレスに適応する過程で筋肉が成長することは理解いただけたと思いますが具体的にどのように筋肉が負荷に対して適応していくのか。

筋肉のストレスへの適応過程は3段階に分けて進むと考えられています。

警告反応期

ウェイトトレーニングを行った後、筋肉痛が起きて筋肉痛が消えるまでの間を警告反応期と呼びます。

筋肉痛というのは筋肉が負荷(ストレス)に負けて筋繊維が炎症を起こしている状態です。

つまり、筋肉が負荷(ストレス)に対して驚いている状態といってもいいでしょう。

筋肉痛は徐々に痛みが強くなる段階とピークを過ぎて痛みが徐々に弱くなっていく段階があります。

それぞれの段階をショック相、抗ショック相と言います。

抵抗期

警告反応期が終わり、痛みや疲労感がなくなってさらにウェイトトレーニングを継続して負荷(ストレス)をかけていくと筋肉が次第に大きく発達していきます。

同じ刺激に対して筋肉痛の強さが低減していきますが、これは相対的に筋力が徐々に向上していることを示していて筋肥大もこの期間に引き起こされていきます。

この期間を抵抗期と呼びます。

筋肉の発達が体感できるのはまさにこの時期です。 

疲弊期

抵抗期に入って次第に筋肉は大きくなっていきますが、負荷が高すぎたり十分な回復が行われないままトレーニングを続けると筋肉に対しては過度な負荷(ストレス)となります。

そうするとトレーニングの意図とは逆に筋肉が落ちてしまったり怪我の原因になったりします。

いわゆるオーバートレーニングの状態です。

このような状態やこうなりやすい期間を疲弊期と呼び、筋肉を発達させる場合は疲弊期にならないように注意しながら進めたいところです。

そのためには負荷の強弱を調整したり、刺激の種類を変えたりするなどしてトレーニングプログラムの適切な管理が必要となります。

筋肉の発達メカニズムを正しく理解

今回は筋肉が発達する仕組みについて勘違いしやすい内容とあわせて解説しました。

仕組みについての解説がどのようなものにしろ、筋肉を発達させるのにトレーニングによる適切な負荷が必要なことに違いはありません。

適切な負荷を与えつつ、十分な休息と栄養補給を行うことで身体がストレスに適応しより強い身体になることができます。

負荷(ストレス)だけでは身体は強くなれないことに十分注意してトレーニング以外にもしっかり目を向けていくことで効率よく身体を鍛え上げることができるでしょう。

今回の内容のポイントは超回復とはグリコーゲンの超回復のことを指し、筋肉の発達メカニズムではないこと。

そして、筋肉が発達するのは筋肉が受けた負荷(ストレス)に対する適応反応の結果であることを理解いただければOKです。

トレーニングで筋肉痛になったときは筋肉が負荷に負けないように適応しようと頑張っているんだなと考えて筋肉を労わってあげてください。 

*1:1990 Ball State University, “Effect of Exercise-Diet Manipulation on Muscle Glycogen and Its Subsequent Utilization During Performance

*2:筋力・筋持久力:厚生労働省

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