[#46]【バッシュ解説】アウトソールが劣化する過程
EN-TRAINトレーナーのぱらとです。
この記事ではTwitterでの発信を深掘りしていくことで物理的な本質からパフォーマンスアップを図るお手伝いをしていきます。
取り上げるツイートは熱処理によって樹脂の白化を改善したように見えて実は改善しておらず劣化が進んでいることを解説したコチラ。
バッシュのアウトソールラバーってどんな材料?
今回の内容はアウトソールの劣化に関わる話。
バッシュの劣化や寿命に関する内容は各SNSで発信をしていますが寿命=すぐに壊れるというわけではないので、危険領域に入ったような状態のバッシュを履きながらプレイしているという人は依然として多くみかけます。
今回お話するアウトソールについてはバッシュに使われている材料の中では比較的寿命の長い材料でどちらかというと劣化よりも損耗によって限界を迎える事が多い部品だと思います。
アウトソールの材料はメーカーやモデルによって配合は異なりますが合成ゴムを主とした構成になっています。
合成ゴムは皆さんが想像されているような典型的なゴムの性質を示してくれるのでバッシュの底面に使用するにはうってつけな材料です。
うってつけな材料ではあるんですが合成ゴムを作る際はゴムの原材料だけでは中々上手く思った形に作り上げることが難しい材料でもあります。
そこで様々な添加剤(加硫剤や安定剤など)を混ぜ込むことで成型しやすい状態にすることができて普段私達が見かけるアウトソールの形に成型することができています。
添加剤のおかげで思い通りの成型ができたり更なる機能付加を行ったりできるわけですが、逆にこの添加剤によって経時的に不良を引き起こすことがあります。
実は合成ゴムの分子構造的に添加剤はゴムの成分と完全に結合しているわけではないので成型されたゴムの中にずっと閉じ込めておくことができません。
長い時間をかけて徐々に添加剤の成分は外にでていってしまいます。
すると添加剤によって得られていた効果も徐々に失われていきます。
アウトソールラバーの硬化はこうした経年による添加剤の流出といった事も合わさって徐々に引き起こされていく現象です。
つまり一度硬化方向に進んだ状態は何をやっても元の状態に戻る事はないのでアウトソールの性能を存分に引き出したいのであればできるだけ製造から日が浅い段階で消耗しきるのが正しい扱い方になります。
樹脂もゴムも同じ高分子材料でできているので近い現象が起きる
ここで今回引用したツイートの内容に触れますが、このような添加剤が外に出ていってしまう現象は高分子材料、つまりプラスチックでも起きます。
外に出た添加剤は樹脂材料の表面を白化させてしまうようなものもあるので古くなるとプラスチックは白くなってしまうことが多いわけです。
白化したプラスチックは添加剤によって表面が覆われているような状態。
なので熱で飛ばしたり、アルコールでふき取ると除去することでき見かけ上は新品に近い状態に戻すことができます。
ただし、先に触れたとおり出ていってしまった添加剤による効果はもうないので樹脂の強度などは低下した状態のままです。
これがアウトソールでも起きるので見かけ上白化してなくても添加剤は徐々に外に出てアウトソールの硬化を進行させます。
硬化は進行しますがバッシュの場合、アウトソールは摩耗によって表面が徐々に削られます。
摩耗は新しい面が常に露出するような状態なので添加剤がまだ残っているマシな状態の面が出てきてグリップ力を発揮しやすい状態を作ってくれます。
しばらく使っていなかったバッシュのアウトソールが硬化して滑りやすい時にやすりがけするとグリップ力が回復する、なんて話の原理はコレです。
あくまでやすりがけによってマシな状態の面が露出しただけで硬化していない状態に戻る事はありえないことには注意しておきたいところです。
逆に外に出ていくことを利用して効力を発揮する添加剤もあるのでそのあたりは使われるモノによって上手く調整していくのがモノ作りメーカーの設計側の仕事だったりします。
ところによってはアウトソールの寿命は10年程度はあります!と解説している場合がありますがこれは材料としての構造的な寿命を示すレベルの年月。
バッシュのように高負荷がかかるような製品のアウトソールの寿命は基本的に機能的な寿命に付随するものになるのでどんなに長くても5年。
それ以上は運動強度を落とさない限り怪我のリスクが一気に増大します。
全力のパフォーマンスを支えるという点ではTwitterなどでも発信していますが、3年を境目として判断するようにお伝えしています。
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